オールドノリタケ・アールヌーボー・ボウル
オールドノリタケとは1800年代の末頃から第二次世界大戦前後頃までノリタケの前身である森村組と日本陶器で作られ、主にアメリカやヨーロッパへ輸出され人気を博した食器や花瓶などの装飾品を総称しています。それらのオールドノリタケはアールヌーボー(曲線的・花や植物などの有機物・エレガントで装飾的)とアールデコ(直線的・幾何学模様・装飾性は低い)の2つに大きく分類されます。
ご紹介する作品はアールヌーボー様式のものです。
初期の作品は手造りで複雑な曲線を持ち、花や樹木などの自然をモチーフにしパステルカラーを基調としています。
・表面を立体的に装飾する技法
・一陳による細かな点を盛り上げる和陶では粒と呼ばれる技法
・盛り上げた生地を下地に刷毛や筆を用いて金を装飾する
・石膏が水を吸収する性質を利用した装飾技法
・エッチングと言われる生地の一部を酸で腐食させそこに金を施す技法
以上の技法を複雑に組み合わせて製造され気品溢れるデザインと色彩で長い間世界中の方々を魅了し愛され続けてきました。
こちらの作品はまさに技法の全てが詰め込まれた傑作品ともいえる逸品です。
パステルカラーをより引き立たせる黒の背景とゴールドのしなやかなラインが、華やかで気高い雰囲気を醸し出します。
また装飾による表面の凹凸が全体のグレードを高めています。
作品裏面のバックスタンプ【M-Nippon】印より制作時期は1910年~1911年で米国輸出向けに作られたものです。バックスタンプ中央の「M」はモリムラの頭文字、森村家の家紋(下り藤)を逆にし上り藤にしています。
1890年のマッキンリー関税法に従い1890年から1921年までの日本陶器合名会社の製品には、生産国表記にローマ字で書かれた【Nippon】が用いられていました。現在でもNipponシリーズのコレクターの方が存在するほどです。
戦前に作られ海外に渡り再び日本に里帰りしたにもかかわらず、傷や修正が無い完全な状態を保っていることにもセンシビリティ―を刺激されます。
直径17㎝・高さ9㎝で8本の脚が付き、たっぷりとした深さのあるボウルです。
華やかな雰囲気とプラグマティックな形が重なって様々なシーンで輝きと存在感を発揮してくれます。
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